今回は元歌手の大将がいる
中野の居酒屋「番屋」の
初訪問から2か月後の再訪問のレポート。
前回の記事はこちら。
2か月後の再訪
やたら歌がうまい
スナック居酒屋のマスターが
実は50年前歌手で
自分ですら持っていないデビュー曲が
家にあった
廃盤コンピレーション集に入ってる奇跡。
しかも前回連れが入札した
デビューシングルレコードが見事落札で
配達されたんで、
この廃盤CDと
若き日のマスターのジャケ写のエクセル画
持っていくことにした。
もうすぐ8月になる
梅雨が明けた蒸し暑い夏日の夕方だった。
前回と同じ3名で2度目の番屋に訪問。
2か月前のことだしマスターは案の定
ウチラのことは覚えてない。
まだ常連客も少ない頃を見計らって
マスターに話しかけてみた。
50年振りの「人生一、二、三」
「実はGWに一度来て
マスターの歌のうまさにまいっちゃって
また来たんですよー」
「おっ、そうだっけ?また来てもらってありがとねー」
「実はこの前家帰ったら、マスターの曲
このCDに入ってたんですよっ。
梅宮辰夫の『ダイナマイト・ロック』
も一緒ですよ!」
「え、なになに?」
とCDを手に取ってまじまじと見る。
「そうだよ!これ、俺のデビュー盤だよ。
懐かしいよなぁ。
おい、ママちょっと見てよ」
「じゃ、せっかくなんで
この曲聴きましょうよ」
「やー、店にCD無いんだよ。残念だなぁ。」
「だったら、
このスマホに『人生一、二、三』入れてきたんで
流していーすかね?」
「ぜひぜひ!」
スマホのスピーカーを大にして
店内には
マスターの50年前のデビュー曲が流れる。
マスターはもちろん客も一言も発せず
耳を澄ませる。
「懐かしいなぁ・・・」
と歌詞を口ずさむ。
「50年たっても忘れねぇもんだよなぁ。」
とはるか彼方を見つめる。
「実はこの前来た時
ネットオークションでこのレコード探したんですよ。
で、なんとこいつが
落札したんで今日持ってきましたよ!」
「おいおい、なんてこったよ。
俺は1枚も持ってないのに、
モノ好きな人がいるもんだねぇ。
ねぇ、ママほらみてよ!」
「じゃ、この曲かけましょうか?」
「レコードプレーやなんかないよなぁ。
聴けないなぁ。」
「うちらもプレーヤーないし
せっかくなんで
マスターにプレゼントしますよ。」
「えーっ、悪いなぁ。本当にいいのかい?」
モザイクで隠れているけどマスターは満面の笑みだ。
エクセル画登場
「マスター、もう一つプレゼントがあるんですよ」
「なんだよ
今日はどんな風の吹き回しだぃ」
確かに2回しか来てないのに、
思い出の品々を
片っ端からプレゼントする変な客だけど
マスターは訝しがらず前乗りになってくる。
「じつは
デビュー盤じゃないんですけど、
セカンドシングルのジャケットの画
を描いたんですよ。
素人の手習いで申し訳ないんですけど、
よかったら受け取ってもらえないすかね?」
額装したエクセル画をマスターに手渡すと
マスターはうっすら涙を浮かべ
まじまじと見とれながら受け取ってくれた。
なんか感動させてしまったみたいだ。
エクセル画のスペック
今回はデビューシングル
『人生一、二、三』の
エクセル画のスペックで。
番屋に行った時にはまだ着手していなかった。
2015年8月制作。
パーツ数129。
白のハイネックセーターがイカしてる。
顔つきは純朴であどけなさが残る。
熱狂の常連客
マスターとうちらのやり取りの中
いつの間にか常連客も増えてきた。
早い時間からいた人は
後続の客に一連のやり取りを教えると
「おー、すげぇ!」
と狭い店内のボルテージも上がってくる。
マスターからはせめてものお礼にと
番屋自慢の焼き鳥のサービスだ。
ここまで盛り上がるとは思ってなかったし
最後まで帰れなくなりそうだから、
「今度は『人生一、二、三』
描いて持ってきますねー」
と頃合い見ておいとますることにした。
店を出ると
カウンター奥の常連客が追いかけてきて
うちらの手を握って涙目で
「本当にありがとぉぉぉっ。
マスター、
いい人なんだよぉっ」
とものすごく感謝される。
入れ替わりで番屋に入る常連客にも
「この人たちすごいよぉ、
マスターにさぁ・・・」
帰れなくなりそうだから
「また来ますねー」で撤収した。
とにかくマスターは常連に
ものすごく愛されていることが分かった。
未納品問題
その後、『人生一、二、三』は描いたけど
中野に行く不便さと
あの熱狂ぶりと対峙する気力も湧いてこなくて
5年たってしまった。
結局『人生一、二、三』は未納品のままだ。
まだお店は営業しているらしいから、
気になる方はマスターの歌声を
聴きに行ってみてくださいねー。
今は中古盤しかないけど、
手に入ればこちらで50年前の
マスターの晴れやかな歌声も聞けますよー。
2回にわたって
デジタルとネットが
50年前の思い出問題を解決した
長ーいお話でした。
おつきあいありがとうございました。